アードラーの夢

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アードラー先生は夢を見なかったそうです。しかしてアードラーの夢とは兎の角、虚空の華、ガンダルヴァの城、空、幻・・・。

天青色

b0253075_21545880.jpg先週、すばらしいものを見ました。

青磁の焼き物です。

大阪市立東洋陶磁美術館という素敵な施設が
北浜のクリニック近くにあり、
そこで今、「台北國立故宮博物院 北宋汝窯 青磁水仙盆」
という特別展が催されています。
青磁は好きなので、カウンセリングの合間に行ってみました。

前日にインターネットで調べたところ、
展示品数6・・・
ろ、ろく? それで入館料1200円?とビックリしたのです。

でも、行って良かったです!
水仙盆はたしかに6つだけでしたが、
他に「宋磁の美」特別展と
平常展「安宅コレクション中国陶磁・韓国陶磁」も同時開催だったので
しっかり見応えありました。

「人類史上最高のやきもの」という謳い文句の
「青磁無紋水仙盆」が、やっぱり凄かった!

雨上がりの空の色を「天青色(てんせいしょく)」というのだそうですが、
なんと表現すればいいのでしょう、この淡い色~
うす~い水色ですが、少し緑がかっているようにも見えます。
ふちの、釉薬のうすくなっているところは、かすかにピンク色です。
全体に透明な膜がかかっているような、宝石のような輝きです。

北宋の時代、この色あいの焼き物を作り出すために、
皇帝御用達の汝窯(じょよう)では釉薬に瑪瑙の粉末を入れていたそうです。
それでも、どれひとつとして同じ色は出ません。

天青色に焼き上がった器はとてもとても貴重で
なかでも「無紋」、
つまりほとんど貫入(細かい釉薬のひび割れ)の入らない器は
「神品」と呼ばれました。

b0253075_2157317.jpg今回出展された6つの水仙盆の中で無紋はひとつだけでしたが、
「人類史上最高のやきもの」とは、言いすぎではない!
と感じるぐらい、ほんとうに美しかったです。

水仙盆って何なんでしょうね?
実際に水仙を活けていたんだとか
犬のエサ入れだとか、
あるいはただ鑑賞するためのものだとか、諸説あるようです。

よく分からない形ですが、
後生大事にケースに陳列された水仙盆ばかり、
音声ガイドの蘊蓄を聞きながらじっくり眺めていると、
なんだかとてもバランスのとれた器に思えてくるから、不思議です(^_^;)


汝窯が天青色の青磁を生み出し頂点を極めた、その600年ほど後、
清の乾隆(けんりゅう)帝はこの無紋の器をこよなく愛し、
底部に自らの詩を彫り込ませ、
b0253075_2214822.jpg専用の台座を作り、中に自筆の書画を納めました。

この台座がまた凄いのです。
紫檀に細かく金で模様を描いているのですが、
あまりにも精緻で、木でできたものとは思えません。
ガラスケースがもどかしい・・・触ってみたかった。

乾隆帝の書画も、見る人が見れば凄いものなんでしょうが
無知なもんで良さがわかりませんでした(^^;)

さらに乾隆帝は、清の技術を結集させてレプリカまで作らせました。
このレプリカも出展されているので、じっくり見比べることができました。
同じ天青色、同じ形、
でも見比べると、無紋の宝石のような輝きはありません。
やはり神品というのは凄いものだと思いました。


水仙盆以外の展示品では、
金の釣窯の「澱青釉紫紅斑 杯」が素敵でした。
天青色に似たうすい水色の杯の内側に
釉の加減か、ピンクの羽のような色が何ヶ所か飛んでいるのです。

この器を見たとき、
・・・オタクな話ですが、
私の大好きな吉田健一の小説『金沢』にでてくる
ある印象的な器を連想しました。

吉田健一の書いたあの器は、きっとこんな器だわ!と。
文章の力によって私の頭の中に浮かんでいるその器は
家に帰って調べると、次のように描写されていました。


・・・「これは如何です、」と言った。それが宋の青磁であることは内山にも解った。そして青磁と言ってもその色がその名器毎に違っていると思った方がいいことも知っていたが、その湯呑みを少し大きくした位の形の器は淡水が深くなっている所の翡翠の色をしていて寧ろそういう水溜りがそこにある感じだった。それを手に取って見るとその底に紅が浮んでいた。そうとでも言う他なくて、それはその紅に水を染めるものが底に沈んでいるのでもよかったが何かがそこにあってその辺が黒に近い緑色でなくて紫に類する紅になっていることは確かだった。どうしてそのように黒ずんだ色調のものが合さってそれ程に明るいものに見えるのか。内山は自分が手に持っているのが青磁の碗とは思えなかった。併し重みがあるから土を焼いた碗であってその形式と約束でそこに別天地があった。


どうやら私が見た器よりも少し色が濃いようですけれど、
「紫に類する紅」が青磁に飛んでいる湯呑みという点は同じ。
吉田健一は「澱青釉紫紅斑 杯」をどこかで見て、
上のような宋の紫紅斑杯を創作したのかもしれないなぁ~
と、うれしくなったのでした。


さて台湾台北の故宮博物院というと、
私は2度も訪れ見学しているのですが、
水仙盆の記憶がありません。

それでも「台北の國立故宮博物院が誇る神品至宝」と謳っているのですから
見たのだろうなあ。

これも帰宅してから、故宮博物院のミュージアムショップで買った
「天工寶物」という本(日本語版)を探してみました。
残念ながら、水仙盆の写真はありませんでしたが、
汝窯については、詳しい記載がありました。


北宋の王朝はかつて「汝州に青磁の焼成を命ずる」、「不合格品のみ民間での使用を許可する」とされ、汝窯は御用窯としての性質を帯びていたため、今に伝わる作品は多くありません。釉色は晴れ渡った晴天の如く澄み切っており、青色を基調とした青磁の伝統を切り開きました。外観は優雅で洗練されており、落ち着いた静寂さが漂い、宋代の人々の風流な趣を具体的に表現したものと言えるでしょう。

汝窯の器は、きっと見ているのでしょうが
あまりにもいろいろ派手な宝物があったので、忘れちゃったのでしょうね。

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しかし宋の青磁、いいなあ~
(目だけは肥えていく・・・)


 
 
 
 
 
 
 
 
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by prem_ayako | 2017-01-21 21:50 | others | Comments(0)

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